加島祥造著「求めない」小学館 「はじめに」より

 誤解しないでほしい。
 「求めない」と言ったって、
 どうしても人間は「求める存在」なんだ。
 それはよく承知の上での
 「求めない」なんだ。

 食欲性欲自己保護欲種族保存欲

 みんな人間のなかにあって
 そこから人は求めて動く−−−それを
 否定するんじゃないんだ、いや
 肯定するんだ。

 五欲を去れだの煩悩を捨てろだのと
 あんなこと
 嘘っぱちだ、誰にもできないことだ。

 「自分全体」の求めることは
 とても大切だ。ところが
 「頭」だけで求めると、求めすぎる。
 「体」が求めることを「頭」は押しのけて
 別のものを求めるんだ。
 しまいに余計なものまで求めるんだ。

 じつは
 それだけのことなんです、
 ぼくが「求めない」というのは
 求めないですむことは求めないってことなんだ。

 すると
 体のなかにある命が動きだす。
 それは喜びにつながっている。

 だけどね、
 意外にむずかしいんだ、だって
 わたしたちは
 体の願いを頭で無視するからね。

 ほどよいところで止める−−−それがポイントだ。でも
 それができなければ、ときには
 もう求めない
 と自分に言ってみるだけでいい。
 すると、それだけでもいい気分になると分かるよ。

 あらゆる生物は求めている。
 命全体で求めている。
 一茎の草でもね。でも、
 花を咲かせたあとは静かに
 次の変化を待つ。
 そんな草花を少しは見習いたいと、
 そう思うのです。