2010年12月09日

月刊「武道」12月号

 月刊「武道」12月号に「鞍馬流剣術形稽古に思う」という記事が掲載されました。
雑誌武道

雑誌武道

 写真では、わかりずらいので記事をコピぺーしておきます。

月刊武道



 鞍馬流剣術形稽古に思う
        鞍馬流剣術第十八代宗家  柴田章雄

 習成館道場には、「古武道の心」の額が掲げてあります。「古武道の心は、自然の道、人間の道を守る事を中心に、これを礼の心を以って表現するものである。技を仕かける者、受ける者互いに目を離さず、隙なき構えの中に充実した気合を以って、形試合を行なう事が修業の第一であり、その結実は残心(残身)にあるものとする。」これは、小笠原流先代宗家のお言葉と思いますが、古武道を修行する者にとって心に留めておくべき内容と思います。
 鞍馬流剣術も稽古方法が昔より伝承されております。私の代で変えるつもりもありませんし、継承していくことの責務を感じております。ただ、現代は技術革新が進んだ為に昔とは違ってきている点も多々あります。そこに現代における形稽古の重要性があるのではないかと感じて、日頃の形稽古に関して感じていることをここに書かせていただきます。
 現代剣道においても形稽古に力を入れている理由の一つは、竹刀しか知らない人たちが増加したことにより、本来の刀法が忘れられている現状に危機感を募らせてのことと思います。日本剣道形の他に「木刀による剣道基本技稽古法」という九本の形が制定されました。
 中学校の武道必修化もあり、安全性を考慮しゴムでできた刀(ここではゴム刀と言わせていただきます。正式名称は精錬刀)が開発されました。このゴム刀は、当たっても痛くないように先端が軟らかくなっています。中に芯棒が入っていてある程度の打ち合いをしても曲がったりはしません。そのゴム刀を使って「すりあげ技」をすると今までにはない感覚がするのです。木刀同士が当たると摩擦は小さく、感覚も一瞬で終わってしまいますが、ゴムとゴムでは摩擦が大きいので鎬の感覚をつかみやすいという利点があります。このゴム刀を形稽古に使用するようになってから、鎬のとらえ方、イメージがつかみやすくなり、鎬の使い方が今までと比べて格段良くなったのです。
 このように昔はなかった道具を使うことにより、理解に時間がかかっていたことが、短時間で感覚がつかめるという利点が生まれました。また、現代では他流派の木刀も簡単に入手できるようになりましたので、直刀、そりの大きい木刀、重くて太い木刀、袋竹刀など、違う道具を使って同じ形を打って比較することができるようになりました。使用する道具が違うと、同じ形でも全く違った形のようになってしまうことが新たに発見されました。形稽古でもやり方の工夫が必要なのではと常々感じています。
 さて、鞍馬流の「変化」というすりあげ、すり落としの技が、巻き落としに通じるということで、広く知られ研究されています。この技は五本目になりますが、一本目は「正當剣」といって、正しく当てる剣です。どの流派も一本目にその流派の特徴の形を持ってきていることが多いと思います。字の如く正しく剣を当てるには、相手の剣の角度によって打つ側の打ち方(切り方)を変えなくてはいけません。相手の木刀が真横に寝ている状態では、上から容易に打つことは可能ですが、相手の木刀が斜めになっている状態で、こちらが打っていくと、剣の軌道が変えられてしまいます。しかし、斜めであっても当たる瞬間は存在するわけですから、その当たった瞬間の感覚、鎬の感覚が非常に重要になってくるわけです。相手の剣の角度によって曲げられた剣でもまっすぐに切り下ろす、練りこむ稽古が重要なのです。この微妙な感覚を時間をかけずに大まかに理解するには,先ほどのゴム刀は有効な道具であり、このような文明の利器が開発されたことは良いことだと最近感じているところです。
 また、ビデオの活用、とくにスローモーションの活用は形稽古には効果が大きいことです。一瞬で終わってしまう場面も、再生すれば何度でも観ることができます。昔の人が何年もかかって観取り稽古で身に付けた極意を一瞬で手に入れることが可能になったわけです。
 このように、文明の利器を利用することで、時間が掛かっていたことが以前より短時間でかつ容易に身につけることが可能になり、稽古に役立てております。
しかし、その反面、修行で大切にしてきたことを失った面もあるのではないでしょうか。過程を大切にしてきた「道の文化」が軽視されるようでは大変なことです。形稽古も「一より始め十に行き 十より還る元のその一」の教えの如く、修錬の積み重ねにより練り上げた後に、もとの状態に戻り稽古する。この繰り返しを大切にしなくてはいけません。稽古とは、古を稽えるわけですから、流祖や師の教えが自分の技になっているかを分析して、少しでも近づけるように修錬を積むことが大切なことです。


shuseikan at 00:32│Comments(0)

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